Gはいつも、自分がこの世で一番頭がいいことを証明しようとしているように見える。
そして、この闘争心がMの隅々にまで浸透している。
テツキ甲高い声の内気な技術屋が一躍世間の注目を集めたのは、一九八六年に株式を公開したときだった。
しかし、仕事に対する厳しさがうすれ、技術上の優位が弱まるのをおそれ、成功に酔いしれようとはしなかった。
つねに危機感をもち、自分は負け犬だと考えていたようだ。
Gは新しい種類の金持ちだった。
個人資産は十億ドルの大台に乗る勢いだった。
マスコミはこぞって、Gをヒーロー扱いにした。
コンピューターおたくが夢見る一躍千金のシンボルになった。
本人がそんなことを望んでいたわけではない。
BGはきわめて質素な生活をしている飛行機はいつもエコノミークラス駐車場の料金が惜しいために、車は路上に駐車する同僚の奥さんがこんなことを言っていた「Bはいまでも、科学コンクールで一等賞をとりたいと思っている」だけど、ぼくはGが好きだった。
ちょっと変わっているところはあるが、トータルにみれば、ノーマルであるただ、どんな議論も競争に変えてしまう天才なのだ。
それまで、パーティーなどで何度か顔を合わせていた。
たぐいまれな知性、新しい発想に対する本能的な好奇心ぼくはそういうところを尊敬していた攻撃される心配はないとわかれば、Gは政治だろうが音楽だろうが、どんな話題にも乗ってくる。
それでもやはり、コンピューターテクノロジーを語り、業界の人間の噂話をしている時がいちばん楽しそうだった。
Gはぼくたちの会社にいる間、いつになくリラックスしているようだった。
ぼくとRを見ると、にっこりと笑い、力をこめて握手をした。
パーティーなんかより、仕事をしている時のほうが、気分がほぐれるのだろうか大物というのはとかく上下関係を微妙にちらつかせるものだが、Gはそんな素振りもみせず、ぼくたちを同等に扱ってくれたGは冷蔵庫から勝手にソダを取り出し、会議室に案内するぼくたちの後についてきたRが、ぺンコンピューターのコンセプト、会社の方針と製品について説明し、Mにアプリケーションを作ってほしいという要望を伝えた、Gは目を細め、膝を抱え込むように前かがみになって、テーブルを見つめていた。
ぼくは、胃が痛いのかと思い、連れの男の顔を見たが、なんの心配もしていない様子だった。
「それから」とGは言ったRが話を続けると、Gの身体は、祈りの言葉を唱えるユダヤ教ハシド派のラビのように、前後に揺れはじめたこれは、集中力を高めるG独特の方法だった。
Rの話が終わると、Gは自分の言葉で話を整理した。
自分が完全に理解していることを確認するような念の押し方だった。
Gは完全に理解していた「たしかに違うマックみたいなもんだそして、うちは選択をできるということだな。
そっちに協力してもいいし、そっちが成功するのを見てから、追いかけてもいい」Rはため息をついた明らかにほっとしたため息だった。
Gはそれから、どんな分野のアプリケーションが一番欲しいのかと訊ねた。
内容をかなり詳しく説明した。
二人の訪問者はかなり時間をかけてデモのマシンを眺めまわしていたが、次の予定が迫っているのだろう。
急いで出口に向かった。
ぼくたちがあわてて追いかけていくと、それまで抑えられていたGの負けず嫌いが思わず顔を出した。
マシンについて、まえにケイニシ(西和彦) と話し合ったことがある西和彦の会社、アスキーは、Mの日本代理店である「しかし、技術がどうにもならなかった。
機が熟したかもしれない。
きみはいいところに目をつけた」「ありがとういっしょに仕事ができるといいんだけれど」「シアトルに帰ったら、誰かに電話をさせてフォローアップする」Gがそう言い終わると同時に、エレベーターのドアが閉まった。
何年かたって、ぼくとGはこの時のことについて、いくつか手紙をやりとりしているキーボードもディスクもない。
マシン入力に手書き文字を認識できるライティングスタイラスを使う。
さまざまな命令に、ジェスチャーを使うというのは、新しいアイデアでもなんでもなく、彼らは「再発見 した。
にすぎない分析このマシンはオープンスタンダードにして、日本のメーカーに作ってもらうほうがいい。
ソフトのレイヤは、デスクトップとの互換性を高める必要がある。
最高のCEOではない。
なかなかいいアイデアだが、大ヒット商品にはならないと思うメモが取れること、ペン入力なら、どこででも使えるという点については、うちも考えてみなければならない。
しかし、GOのISVになる必要はない。
(Gの要望により、この電子メールの全文を巻末の「付録」に掲載した。
)二週間後、マンジ、エスパ、Gに電話をかけ、出資についての考えをきいてみた。
マンジの答え「出資するつもりはないが、もっといろいろ知りたい分野だ。
アプリケーションについては、話し合いを継続したい」「ハード会社とのあいだに問題が出てくるが、Gの答え「出資に関心はないしかし、そっちに連絡がいくと思う」そちらといっしょにプロジェクトをスタアプリケーション部門の三人の返事を聞いた直後、ロバトがぼくの部屋に入ってきた「それなら、どこから金を集めるんだ」「当てはない一か月を無駄に使ってしまったいよいよ。
尻に火がついてきた」Kもやって来た「だから言っただろう。
」という顔をしている「よし、こうしよう仕事を分担するんだ。
きみたち二人は、本来の仕事に専念するぼくはもっとしっかりした。
事業計画を立てるJに電話をかけて、Vとアポを取ってもらうきみたちはそれぞれ、自分の分野について、きちんと数字を出してくれ。
それでなんとか見栄えのするものを作ろう。
投資家は数字にうるさい連中が多いんだ先見の明があるわけじゃないグラフ、表、シナリオ、スライド、そういったものが必要なんだ。
予算を調べて、あと何か月しのげるか計算してみよう」RとKは自分の部屋に戻り、修正した。
予算案を電子メルで送ってきた。
そして猛然と、最後の答えを出す作業にとりかかった。
Rはスプレッドシトにはめっぽう強い。
そこで、ぼくのコンピューターを占領して、さまざまな部門の数字を集計しはじめた「うんそう心配はいらない財布のヒモをしめれば、一月まではなんとか行けそうだ」ということは、六か月は大丈夫だということだ「ほっとした。
よ」とKが言った「ちょっと待ってどうもおかしいとぼくは言った。
Rはスプレッドシトを見直していた「くそこの列が合計に入っていない。
ぼくはRの左側から画面を覗き込んだKはRを押し退けるように、画面の小さな数字を追いかけている荷子取りゲ-ムをしているような感じになってきた「九月 とぼくは言った「いや、なんとか十月末まで引っ張ってくれもっと予「オーケーそれで行こう」Jに電話すると、接触すべきベンチャーキャPルの名前が速射砲のように飛び出してき。
資金の話をしているとき、Jの舌は一番なめらかになる「もっとゆっくり言ってよ。
そんなに早口で言われでも、タイプできない」Jはそこですこし間をおいた「いや、待てよ。
うちのリミテッドに接触してもいいクライナーパキンス(K P) の投資ファンドに、リミテッドパートナーとして金を出している組織のことを言っているのだ。
ベンチャーグループは新技術を求めているAは金が余っている。
Iのアンディグローブには、わたしから電話をかけてもいい。
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